アメリカと日本の両国で働いた経験がある方にとって、年金の受給資格や受給額がどのように計算されるのかは非常に重要な関心事です。ここでは、日本の厚生年金や国民年金の支払いが、アメリカで受給できる年金額にどのような影響を与えるのかについて詳しく説明します。
日米社会保障協定とは?
日米社会保障協定は、日本とアメリカの両国で働いた人が年金を受給する際に、各国の年金制度の加入期間を通算することを可能にする制度です。この協定により、日本での年金加入期間をアメリカの社会保障クレジットとしてカウントすることができ、逆もまた同様です。これにより、両国の年金受給資格を満たすために必要な期間を短縮することができます。
年金受給資格の取得
アメリカの社会保障クレジット:
- アメリカでは、40クレジット(約10年)の社会保障税支払いが必要です。2025年には、1クレジットを得るのに必要な収入金額は$1,810ドルです。したがって、年間最大4クレジットを獲得するには、$7,240ドルの収入が必要です。
- 日米社会保障協定を利用する場合、アメリカで最低6クレジット(1.5年間)を取得し、日本とアメリカの合算で40クレジットを満たすことができます。これにより、アメリカでの労働期間が短くても年金受給資格を得ることが可能です。
日本の厚生年金と国民年金:
- 日本の厚生年金や国民年金の加入期間も、日米社会保障協定によりアメリカの社会保障クレジットとしてカウントされます。例えば、日本で30年間年金に加入し、その後アメリカで3年間働いた場合でも、両国の年金受給資格を満たすことが可能です。これにより、長期間にわたり両国で働いた人でも年金受給資格を得やすくなります。
年金受給額への影響
アメリカでの年金受給:
日米社会保障協定により日本の年金加入期間がアメリカのクレジットとして認められた場合でも、実際の年金受給額はアメリカでの労働期間と収入に基づいて計算されます。つまり、日本の年金加入期間は受給資格には影響を与えますが、受給額そのものには直接の影響はありません。例えば、アメリカでの収入が高ければ、それに基づいて年金受給額も高くなりますが、日本での収入は計算に含まれません。
日本での年金受給:
同様に、日本での年金受給額も、日本の年金制度に基づいて計算されます。アメリカでの労働期間が受給資格に影響を与えることはありますが、受給額そのものには直接影響を与えません。例えば、日本での収入が高ければ、それに基づいて年金受給額も高くなりますが、アメリカでの収入は計算に含まれません。
二重課税の回避
日米社会保障協定は、二重課税の回避も目的としています。例えば、アメリカで社会保障税を支払っている場合、日本での年金保険料の支払いが免除されることがあります。逆に、日本で年金保険料を支払っている場合、アメリカでの社会保障税の支払いが免除されることもあります。これにより、両国での税負担を軽減することができます。
社会保障給付金受給時の所得税
アメリカの社会保障給付金は、所得税の対象となる場合があります。受給者の「合計所得」に応じて、給付金の一部が課税対象となります。合計所得は以下の式で計算されます:
合計所得 = 調整後総所得(AGI) + 非課税利息 + 社会保障給付金の50%
具体的な課税基準は以下の通りです:
- 独身者の場合
- 合計所得が$25,000未満:非課税
- 合計所得が$25,000以上$34,000未満:給付金の最大50%が課税対象
- 合計所得が$34,000以上:給付金の最大85%が課税対象
- 配偶者と共同で申告する場合
- 合計所得が$32,000未満:非課税
- 合計所得が$32,000以上$44,000未満:給付金の最大50%が課税対象
- 合計所得が$44,000以上:給付金の最大85%が課税対象
これらの基準は長年変更されておらず、2025年も適用されるとされています。ただし、税制の変更がないことを確認するため、最新の情報は米国国税庁(IRS)の公式ウェブサイトや税務専門家への相談を通じて確認することをお勧めします。
社会保障給付金の受給と就労
社会保障給付金を受給しながら働く場合、給付額が減額される可能性があります。2025年には以下のルールが適用されます:
- 67歳未満の場合: 年間収入が$23,400を超えると、その超過分の$2ごとに$1が給付金から差し引かれます。
- 67歳になる年の場合: 収入上限が$62,160に引き上げられ、その超過分の$3ごとに$1が差し引かれます。
- 67歳以上の場合: 収入に制限はなく、どれだけ稼いでも社会保障給付金が減額されることはありません。
オンラインでの社会保障給付金情報管理
社会保障明細書で給付金について確認するためには、オンラインのアカウントを作成することが重要です。社会保障行政管轄のウェブサイトから、my Social Securityアカウントを開設することで、個人の社会保障明細書を閲覧することができます。この明細書は、将来の社会保障給付や現時点の収入履歴について知りたいと考えているすべての年齢層の人にとって非常に役立ちます。誕生日の3か月前になると各個人に自動的に通知が送られます。
まとめ
日米社会保障協定は、日本とアメリカの両国で働いた人々にとって非常に重要な制度です。この協定により、両国の年金制度の加入期間を通算することが可能となり、年金受給資格を取得しやすくなります。ただし、実際の年金受給額は、それぞれの国の年金制度に基づいて計算されるため、日本とアメリカの年金制度の違いを理解し、適切に計画を立てることが重要です。
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