アメリカの社会保障:老齢給付金から障害給付金までの種類と受給条件

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アメリカの社会保障制度にはどんなものがあるのでしょうか。

アメリカの社会保障制度には、退職、障害、死亡により損失した収入の補填を目的として次のような種類があります。

1. 老齢給付金:老齢給付金は、退職した労働者に対して経済支援を提供するものです。労働者が一定の社会保障税を支払い、一定の条件を満たすと、定期的な年金給付を受けることができます。給付額は、社会保障税の支払い期間や収入に基づいて計算されます。

2. 家族給付金:一定の社会保障税を支払った受給者の家族がもらえる給付金です。老齢給付金に付属しています。受給資格のある家族は、子供、配偶者、離婚した元配偶者です。なお、家族が家族給付金をもらうことで、受給者本人の老齢給付金が減額されることはありません。

3. 遺族給付金:遺族給付金は、一定の社会保障税を支払った受給者が不意の死を遂げた時に家族に最低限の生活維持を保証するための給付金です。老齢給付金に付属してます。受給資格のある家族は、子供、配偶者および離婚した元配偶者、扶養家族とみなされる親です。

4. 障害給付金:障害給付金は、労働能力が障害によって制限されている人々に対して経済的な支援を提供するものです。労働者が一定の社会保障税を支払い、労働能力が長期間または永久的に制限された場合に給付を受けることができます。

5. メディケア:メディケアとは、高齢者および一部の障害者に対して医療サービスの給付を提供する医療保険です。保険料を支払った労働者やその家族が一定の条件を満たすと、医療費の一部をカバーすることができます。

現在、会社にお勤めの方は、将来給付金を受給するために、社会保障税 (Social Security Tax)とメディケア税 (Medicare Tax) を毎回の給与のグロス金額から天引きされることで納めています。

誰が、いつから、どんな給付金を、もらえるのでしょうか。

1. 老齢給付金
誰が:アメリカで約10年間 (40クレジット-年間4クレジットx10回) 社会保障税を納めた人です。
日米社会保障協定に該当する場合は、①アメリカで足掛け2年(6クレジット-年間4クレジットx1.5回)社会保険税をおさめて、かつ、②日本とアメリカ合わせて約10年間(40クレジット)、社会保障税(アメリカ)又は厚生年金保険(日本)を納めた人です。
なお、クレジットを獲得するために必要な収入金額は毎年変わっております。2023年には1クレジットを得るのに必要な収入金額は、$1,640ドルです。年間最大4クレジットを獲得するには、$6,560ドルの収入金額が必要です。
いつから:繰り上げ受給をする場合、老齢給付金は62歳から受け取ることができます。標準退職年齢に達すると満額受給ができます。標準退職年齢から70歳まで受給を遅らせると、受給額が増額されます。
標準退職年齢は、以前は65歳でしたが、1938年以降に生まれた人から数か月ずつ引き上げられ、1960年以降に生まれた人の場合は67歳となります。

2. 家族給付金
誰が
① 次の要件を満たす給付金受給者の配偶者。
・受給者が給付金受給を開始していること、・受給者との婚姻関係、・62歳以上、・62歳未満の場合は受給者の16歳未満の子を養育している
配偶者自身に老齢給付金の受給資格がある場合は、自身の老齢給付金と家族給付金のうち、どちらか高い方の受給になります。
②次の要件を満たす給付金受給者の離婚した元配偶者。
・受給者との10年以上の婚姻関係、・62歳以上で独身
③次の要件を満たす給付金受給者の子供。
・独身であること、かつ・18歳未満、または・19歳未満の高校生、または・22歳までに重度の身体障害となった者(年齢制限なし)
いつから:標準退職年齢まで待ては、配偶者は受給者の基礎給付額の50%を生涯受給できます。老齢給付金と同様に家族給付金の受給額は、配偶者が給付金の受給を標準退職年齢より早期に申請すると減額されます。標準退職年齢は、以前は65歳でしたが、1938年以降に生まれた人から数か月ずつ引き上げられ、1960年以降に生まれた人の場合は67歳となります。

3. 遺族給付金:遺族給付金においては、労働者が40クレジットを取得する前に、若くして亡くなってしまう事態が起こります。その為、死亡時の年齢によって必要な最低クレジットが決められています。
誰が・いつから
① 次の要件を満たす配偶者。
・死亡者との婚姻関係、・60歳以上、・60歳未満の場合は死亡者の16歳未満の子供を養育、・遺族給付金の受給開始時点で独身であること
②次の要件を満たす離婚した元配偶者。
・死亡者との10年以上の婚姻関係、・60歳以上、・遺族給付金受給開始時点で独身であること
③次の要件を満たす子供。
・独身であること、かつ・18歳未満、または・19歳未満の高校生、または・22歳までに重度の身体障害となった者(年齢制限なし)
④次の要件を満たす親
・62歳以上、かつ・生計の半分以上を受給者に依存

4. 障害給付金:障害給付金を受給するには次のことを証明する必要があります。
①就労をしていたこと、②障害により就労が不可能になったこと
障害給付金の申請は却下されることが多く、受給への道は容易ではありません。

5. メディケア:メディケア制度は、パートA(病院保険)、パートB(医療保険)パートC(メディケアアドバンテージプラン)、パートD(薬物適用範囲)があります。
誰が・いつから:65歳以上の人が対象です。障害、末期腎疾患またはALS病者はより早くメディケアを取得できる場合があります。
パートA(病院保険)は、上記の基本条件(65歳、障害、末期腎疾患またはALS病者)と約10年(40クレジット)の就労期間条件を満たしている場合は、無料で加入することができます。
ただし、パートA(病院保険)の40クレジットの計算に、日米社会保障協定の通算クレジット、つまり、日本での社会保険制度の加入期間を含めることはできません。
パートB(メディケア保険)パートC(メディケアアドバンテージプラン)、パートD(薬物適用範囲)への加入は、月額保険料を支払う必要があります。

社会保障給付金を受け取りながら働く場合、給付金が減額されるのでしょうか。

老齢給付金は、退職後の資金を目的とするものであり、受給者が本当に退職後であるのかを判断する基準が必要となります。制限を受ける収入は、就労して得る収入、または、自営業者として得る純利益であり、利息収入や賃貸収入のような受動的な収入は含まれません。つまり、受給者が仕事に従事しているかいないかが判断の基準となります。

老齢給付金、家族給付金、遺族給付金の受給において、受給者の就労収入の上限が下記のように規定されています。(受給者が1960年以降に生まれて標準退職年齢が67歳の場合。)
・67歳未満:2023年の就労収入の年間限度額は$21,240ドルです。この上限を超えた就労収入がある場合は、$2ドルごとに給付金から$1ドル差し引かれます。
・67歳になる年度で67歳の誕生日まで:2023年の就労収入の年間限度額は$$56,520ドルです。この上限をこえた就労収入がある場合は、$3ドルごとに給付金から$1ドル差し引かれます。
・67歳以上:就労収入の年間限度額なし、上限を超えた減額なしです。

利息収入や賃貸収入については制限を受けないということですので、給付金をもらう前までに就労収入以外で得られるある程度の収入があると老後は安心だと思います。

社会保障給付金は所得税を支払わなければならないのでしょうか。

あなたの社会保障給付金は、あなたの状況に応じて課税される可能性があります。
課税されるかどうか次の方法で確認しましょう。

まず合計所得を計算してみましょう。
合計所得=調整後総所得 (AGI) + 非課税利息 + 社会保障給付金の 1/2

①あなたが独身として申告する場合
・合計所得が$25,000ドル未満である場合は、社会保障給付金に対して税金を支払う必要はありません。
・合計所得が$25,000ドルから $34,000ドルの間では、給付金の最大50パーセントに対して所得税を支払わなければならない場合があります。
・合計所得が$34,000ドルを超える場合、給付金の最大85パーセントが課税される可能性があります。

②あなたが配偶者と共同申告する場合
・合計所得が$32,000ドル未満である場合は、社会保障給付金に対して税金を支払う必要ありません。
・合計所得が$32,000ドルから$44,000ドルの間では、給付金の最大50パーセントに対して所得税を支払わなければならない場合があります。
・合計所得が$44,000ドルを超える場合、給付金の最大85パーセントが課税される可能性があります。

③あなたが結婚していて配偶者とは別に申告する場合
おそらく給付金に対して税金を支払うことになるでしょう。

社会保障給付金に対して税金を支払う必要がある場合は、IRS に四半期ごとに見積もられた税金を支払うか、給付金から連邦税を源泉徴収することを選択できます。

社会保障明細書で給付金について確認しましょう。

社会保障行政管轄のこちらのサイト、my Social Security accountを開設することでオンラインであなたの社会保障明細書を閲覧できます。この社会保障明細書は、将来の社会保障給付や現時点の収入履歴について知りたいと考えているあらゆる年齢層の人にとって役立ちます。誕生日の3か月前になると各個人に自動的に通知がきます。

まとめ

アメリカの社会保障制度は、退職、障害、死亡によって損失した収入の補填を目的として、老齢給付金、家族給付金、遺族給付金、障害給付金、そしてメディケアなどの種類が存在します。

老齢給付金:退職した労働者に経済支援を提供するもので、一定の社会保障税を支払い、一定の条件を満たすことで受給できます。受給額は支払い期間や収入に応じて計算されます。

家族給付金:一定の社会保障税を支払った家族が受給できる給付金で、受給資格のある家族には子供、配偶者、離婚した元配偶者が含まれます。受給家族の給付金を受けても受給者の老齢給付金は減額されません。

遺族給付金:亡くなった受給者の家族に最低限の生活維持を保証するための金で、受給資格のある家族には子供、配偶者、離婚した元配偶者、扶養家族とされる親が含まれます。

障害給付金:労働能力が障害によって制限された人々に支援を提供するもので、一定の社会保障税を支払い、労働能力が長期的または永久的に制限された場合に受給できます。

メディケア:高齢者や一部の障害者に医療サービスの給付を提供する医療保険で、一定の条件を満たす労働者や家族が加入することができます。

これらの給付金を受け取りながら働く場合、給付金の受給額は就労収入によって減額されることがあります。具体的な上限や減額の計算は受給者の年齢や状況によって異なります。

また、社会保障給付金は所得税の対象となり、受給者の所得に応じて課税される可能性があります。所得税の支払いは受給者の合計所得に基づいて計算されますが、収入や家族構成によって税率が変わるため、具体的な金額は個々の状況によって異なります。

オンラインのアカウントを作成することで、個人の社会保障情報にアクセスできるようになります。

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