米国の永住権を放棄するという決断は、単に法的なステータスを変更するだけでなく、税金の面でも大きな影響を及ぼします。永住権を放棄した後の米国の税務義務には、特に注意を払う必要があります。この記事では、永住権放棄後の米国の所得税申告と出国税について、詳しく解説します。
永住権放棄後の所得税申告
永住権を放棄した年には、放棄する日までの期間について、米国内外の全世界所得に対して所得税申告を行う必要があります。例えば、2024年6月30日に永住権を放棄した場合、2024年の1月1日から6月30日までの所得に対して米国の税金が課税されます。
放棄後の最初の申告では、IRS Form 1040を使用し、「Dual-Status Taxpayer」として申告を行います。これには、年の前半に永住者として、後半に非居住者として過ごしたことを示す「Dual-Status Statement」を添付する必要があります。
出国税(Exit Tax)
永住権の放棄に伴い、特定の条件を満たす人々は「出国税」の対象となります。出国税は、放棄時に仮想的にすべての資産を売却したと見なし、その時点での未実現利益に対して課税されるものです。出国税の対象となるのは以下の三つの条件のいずれかに該当する場合です。
- 純資産が200万ドル以上であること
- 過去5年間の平均年間所得税が一定額(2024年の場合は201,000ドル)以上であること
- 国外追放又は米国居住終了の日までの5年間において、すべての米国連邦義務を遵守したことをForm 8854で証明できないこと
例として、健心が永住権を放棄する際に純資産が250万ドル、過去5年間の平均所得税が210,000ドルであった場合、健心は出国税の対象者となります。健心は放棄する前にForm 8854を提出し、所有するすべての資産の公正な市場価格を報告する必要があります。もし健心が所有する株式が放棄前に大きく価値を増していた場合、その増加分に対して税金が課されます。
税務申告の手続き
永住権放棄者はForm 8854を提出して出国税の計算を行い、必要があればその税金を支払う必要があります。このフォームで、過去5年間の連邦所得税申告の履歴も確認されますので、過去の申告が未完了であれば、それを清算することが必要です。
永住権放棄後の生活設計
永住権放棄後の生活設計も重要です。放棄後はビザの取得や滞在許可の管理が必要となり、米国内での経済活動にも制限がかかる場合があります。また、放棄後の居住地の税務制度についても理解し、二重課税を避けるための対策を講じることが大切です。
まとめ
永住権放棄に伴う税務処理は複雑であり、間違いが生じると重大な財政的リスクを招くことになります。放棄を検討中の方は、税務アドバイザーに相談し、適切な申告と計画を行うことが非常に重要です。永住権放棄は大きな一歩であり、その前後で適切な税務対策を講じることが、未来の財政安全を保つ鍵となります。
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