アメリカでの子育てに関する税制優遇措置と529学資貯蓄プラン

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アメリカで子育てをする際に知っておきたいのが、税制優遇措置と教育貯蓄手段です。児童税額控除や育児経費控除は、子供を育てる家庭に経済的な支援を提供し、また、子供の教育に向けた貯蓄方法としての529学資貯蓄プランが注目されています。

児童税額控除(CTC – Child Tax Credit)とは?

アメリカで子供を扶養する家庭が税金の控除を受けることができる制度です。個人税務申告書(Form 1040)上で、家族として適格な子供(Quaified Child)を扶養している場合、その子供ごとに児童控除を申請して税額を抑えることができます。

児童税額控除の最大値は、対象となる子供1人あたり$2,000ドルです。

2018年から2025年に始まる課税年度では、修正調整後総所得(Modified Adjusted Gross Income)が$200,000ドル(夫婦共同申告の場合は、$400,000ドル)を超えた場合、子供1人あたり$2,000ドルの控除が段階的に廃止または減額されます。

2025年以降に始まる課税年度の段階的廃止基準額は、夫婦共同申告の場合は$110,000ドル、夫婦個別申告の場合は$55,000ドル、その他の納税者の場合は$75,000ドルとなります。

児童税額控除となる子供の扶養条件とは?

  • 年末時点で16歳以下であること。
  • 息子、娘、継子、対象となる里子、兄弟、姉妹、義理の兄弟、義理の姉妹、異母兄弟、異母姉妹、またはこれらのいずれかの子孫 (孫、姪、甥など) であること。
  • 年間を通して対象となる子供の経済的支援を半分を超えておこなっていること。
  • 半年以上一緒に住んでいること。
  • 個人所得税申告書に基づいて扶養家族として適切に申告されていること。
  • 子供自身がその課税年度に配偶者と夫婦合算申告をしていないこと、または、自身で申告書を提出している場合は源泉徴収された所得税又は予定納税の還付請求するためだけ申告書を提出している場合に限る。
  • その子供がアメリカ市民(U.S. Citizen) 、アメリカ国民(U.S. National) 、またはアメリカ居住外国人であること。

扶養している子供が社会保障番号(SSN)を保持していない場合は、個人納税者番号(ITIN)を申請することになります。

両親が離婚または法的に別居している子供の扶養の請求には、特別な規則が適用されます。
また、子供が複数の納税者の適格な子供となるための要件を満たしている場合、その子供の扶養の請求にはタイブレーク規則(Tie-Breaking Rule)が適用されます。

追加児童税額控除(ACTC – Additional Child Tax Credit)とは何ですか?

児童税額控除は、子供1人あたり$2,000ドルなのですが、何等かの理由で全額$2,000ドルを控除しきれない場合に、2023年については、$1,600ドルまで税務申告書上で払い戻しができます。この払い戻しが可能な税額控除を追加税額控除といいます。
児童税額控除(CTC)は還付可能でない控除(Non-Refundable Credit)ですが、追加児童税額控除(ACTC)は、還付可能な税額控除(Refundable Credit)です。

その他の扶養家族に対する控除(Credit for Other Dependents)とは、どういったものですか?

児童税額控除を受ける資格がない17歳以上の子供を扶養している場合は、その他の扶養家族に対する控除を請求することができます。
その他の扶養家族に対する控除は、子供だけでなく、扶養されている親、納税者と同居している血縁関係のない扶養家族も対象となります。

その他の扶養家族に対する控除の最大値は、条件を満たす扶養家族ごとに$500ドルです。

2018年から2025年に始まる課税年度では、修正調整後総所得(Modified Adjusted Gross Income)が$200,000ドル(夫婦共同申告の場合は、$400,000ドル)を超えた場合、扶養家族1人あたり$500ドルの控除が段階的に廃止または減額されます。

2025年以降に始まる課税年度の段階的廃止基準額は、夫婦共同申告の場合は$110,000ドル、夫婦個別申告の場合は$55,000ドル、その他の納税者の場合は$75,000ドルとなります。

その他の扶養家族に対する控除は、税額を減額することができますが、$500ドル全額を控除しきれなかった場合にに納税者に払い戻しがなされる控除ではありません。 (Non-Refundable Credit)

育児経費控除(Child and Dependent Care Credit)を請求できる条件は何ですか?

仕事を持っている独身または共働きの夫婦が、12歳以下の子供のために支払ったベビーシッター、保育園、託児所に支払った費用が対象となります。この控除を認められるためには役務所得(給与や自営業の事業所得)稼得していなければなりません。

この控除は育児経費の他に障害者(配偶者を含む)や老人などのための世話費も含まれます。

共働きの夫婦の場合は、夫婦合算申告で申告書を提出する必要があります。

ただし、法的に別居している場合や半年以上配偶者と別居している場合などは、夫婦個別申告でも例外として認められる場合があります。
離婚又は別居した場合で、あなたが監護親(Custodial Parent)である場合、この育児経費控除を請求できる場合があります。

育児経費控除はいくらまで控除できますか?

子供が1人の場合は年間育児経費の上限額が$3,000ドル、2人以上の場合は$6,000ドルになります。子供の健康と保護を確保するために支払われる費用が適格な費用となります。

雇用主などから受けたった育児給付金がある場合は、上限額からそれらの給付金の額を差し引く必要があります。

529学資貯蓄プランとは、どんなものですか?

アメリカの大学の学費は年々高騰しており、2022年から2023年の授業料年度において、州内公立大学の年間費用は23,250ドル、私立大学は53,430ドルとなっています。こうした教育費を賄うためには、親にとってさまざまな資金調達が必要です。その中でも特に有益なのが529学資貯蓄プランです。このプランは、所得制限が少なく、税制上の優遇措置を享受できる柔軟な口座を提供します。内国歳入法第529条に由来する名前の通り、将来に備えて資産を育てる場として設計されています。

幅広い利用途と柔軟性
大学だけでなく、529学資貯蓄プランは小学校や高校の授業料にも使用可能(年間最大$10,000ドル)です。また、大学や大学院に進学する場合、認定教育機関のフルタイム学生の授業料、手数料、書籍、消耗品、学習用具、部屋代、食費などにも適用できます。

口座開設と運用
親や祖父母が子供を受益者として指定し、プランを開設します。多くの州が後援するこのプランは、金融サービス会社と連携して管理されています。投資家である口座所有者が資金の使途を決定し、監視することが可能です。これにより、お金が教育以外の用途に使用されることを制御する一方で、別の受益者にも送金する柔軟性も持たせています。

所得税のメリット
カリフォルニア州の529学資貯蓄プランへの拠出額は、連邦レベル、州レベルともに控除の対象にはなりませんが、規定された教育費用に使用される場合、運用された収益部分は非課税となります。

贈与税・相続税のメリット
529学資貯蓄プランでは、資産計画に関する追加のメリットが得られる場合があります。 「529学資貯蓄プランへの拠出は、相続税の観点から『完了した贈与』とみなされます。そのため、たとえ口座が口座所有者の管理下にあったとしても、それらは口座所有者の課税遺産から除外されます。

2023年においては、年間$17,000ドル(夫婦の場合は$34,000ドル)を超える贈与については、贈与税申告書(Form 709)を提出する必要があります。年間贈与税非課税額を超える金額は、個人の生涯贈与税非課税限度額に算入されなければなりません。連邦政府の生涯贈与税非課税限度額は、2023年は個人当たり$1,292万ドルです。(カリフォルニア州では、贈与税は施行されていません。)529 学資貯蓄プランでは、単年で受益者あたり $85,000 ドル (夫婦合算申告の場合は$170,000ドル – 2023 年) を拠出することができ、その一時金を 5 年間にわたって拠出しているかのように扱うことができます。生涯贈与税の控除を損なうことなく、多額の金額を529 学資貯蓄プランへ拠出することができます。

未来への準備と柔軟性
将来に向けた資産計画を考えるなら、529学資貯蓄プランは魅力的な選択肢です。大学進学を見据えた子供や孫がいる場合、このプランを活用することで、教育への支援を効果的に行うことができます。開始が早いほど、税金の繰り延べ成長と寛大な拠出制限をより長く活用できるでしょう。

Roth IRAとの連携
2024年からは、529学資貯蓄プランからRoth IRAへの資金移動が可能となります。これにより、受益者(子供)が15年以上の所有期間を持つRoth IRAに529学資貯蓄プランの資金を非課税で交換することができます。年齢制限なしにRoth IRAに拠出できるこの仕組みは、子供の未来のための資産形成の幅を広げるものと言えるでしょう。

まとめ

アメリカでの子育てにおいて重要なポイントは、税制優遇措置と教育貯蓄方法です。児童税額控除や育児経費控除は、経済的支援を提供し、子供の教育に向けた貯蓄手段としての529学資貯蓄プランが注目を浴びています。

児童税額控除(CTC)は、子供を育てる家庭に税金控除をもたらす制度であり、対象子供につき最大$2,000ドルの控除が可能です。対象子供の条件には年齢や扶養状況などが含まれます。

育児経費控除は、独身または共働きの夫婦が育児費用を支払った場合に適用され、対象子供の年齢や支払った費用に基づいて控除額が決まります。

529学資貯蓄プランは、大学進学などの教育費用を賄うための柔軟な投資手段であり、将来の資産形成に役立ちます。州内公立大学や私立大学の授業料に使用できるほか、所得税や相続税の面でも優遇されます。

これらの措置とプランを活用することで、アメリカでの子育てにおける経済的な負担を軽減し、将来の教育費用に備えることができます。

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